
Purelizer 使用報告 - t.t
2025/01/14 (Tue) 18:13:53
1.はじめに
リニアフェーズのチャンネルディバイダーを探している時に Purelizer を知りました。
2024年7月のことです。
私はチャンネルディバイダーを 20 年近く、デジタル⽅式も 10 年弱使っています。
その経験から⾒て、本ソフトは非常に良くできていると思いました。
拙宅のメインシステムで半年ほど運用しましたので、使用環境、特性、調整のポイン
トなどを書かせていただきます。
Purelizer を使って、多くの⽅がマルチアンプ⽅式の道へ踏み込んでいただけたらと思います。
全体は⻑くなるので、3 回に分けて順次掲載します。
もし、私の誤解などでフラチキ様のお考えとズレているところなどがあれば、ご指摘下さい。
以下に私が⼼惹かれた点を列挙します。
(1)フィルターがリニアフェーズである。
(2)急峻な減衰カーブ、最大 100dB/oct が可能である。
(3)4way に対応している。
(4)各チャンネルのゲイン調整で(減衰だけでなく)増幅ができる。
(5)低域を boost する機能がある。
(6)CPU の負荷を低減する高速フィルターがある。
(7)ディレイの調整範囲が 999cm と広くなっている※。
※これは 7 月にお願いして、すぐにご対応いただきました。本当に感謝しています。
(続く)
Purelizer 使用報告(その2) - t.t
2025/01/15 (Wed) 21:20:01
今日は使用環境を紹介します。
2.使用環境
(1)条件設定
パソコンが追従できるかは、条件設定にも依存しますので、最初に設定画面を図1に示します。
最低域のカットオフ周波数が70Hzの4wayで減衰カーブは96dB/octです。
処理する⾳源は96kHz,24bitです。
この条件でタップ数は12789になりました。
(2)ハード
パソコンはMouseComputer B4-I1U01PG-B。ファンレスのノートPCで、CPUはIntel N100、メモリが16GBの仕様です。
オーディオインターフェイスは自作です。miniDSP社のMCHStreamer Kit のI2S出⼒を S/P DIF へ変換して8ch のデジタル出⼒を得ています。
(3)ソフト
パソコンに⾳楽プレーヤー TuneBrowser と Purelizer を⽴ち上げて使います。前者には VSTプラグインでルーム補正(DiracLive)を入れます。
TuneBrowserの出⼒はWASAP排他モードでHi-Fi Cable Inputへ送ります。
Purelizerの入⼒はHi-Fi Cable Output、出⼒はminiDSP ASIO Driver です。
3.CPU 負荷率など
上記の環境でタスクマネージャーの負荷率は CPU40%(Purelizer は 10%以下)、メモリー 30%でN100でもハイレゾ⾳源(96kHz 24bit)の4way出⼒が可能でした。
(3回目へ続く)
Purelizer 使用報告(その3) - t.t
2025/01/16 (Thu) 21:23:57
3回目は私が測定した Purelizer の特性、調整のポイントを紹介します。
4.遮断特性
カットオフ周波数 500Hz、クロスレベル-6dBの、LPF(赤線)、HPF(青線)の 特性を図2に示します。上側がスロープ-48dB/oct、下側が-96dB/octです。
FIR の演算をシンプルに⾏っていると推察できる特性で好感を持てます。
5.矩形波の分割再合成
矩形波をPurelizerで4wayに帯域分割し、それを加算した波形を確認しました。このテスト時の Purelizer の設定画面は図 3 になります。カットオフ周波数は 70、200、1.5kHz、クロスレベル-6dB、遮断カーブ-96dB/oct です。各chのゲインは 0dB、Delay は 0cm です。
周波数 50、100、200、500、1k、2kHz の矩形波を Purelizer で 4way に帯域分割した波形、それを加算した波形を図 4 に示します。波形は上から順に WOF、MID、SQU、TWE、再合成です。
急峻な遮断にもかかわらず、再合成で矩形波を再現するのは、リニアフェーズの威⼒です。アナログでは実現できない夢のような︖特性です。
6.調整のポイントなど
マルチアンプシステムで良い⾳を得るには測定と調整が不可避です。
特にスピーカー間の位相を合わせるのが重要です。スピーカーは機種ごとに、さらに周波数により入⼒信号に対する位相ズレの量が変わります。振動板と⽿の距離を合わせても、位相を揃えることにはなりません。
カットオフ周波数において、各スピーカーからの⾳が、どのようにリスニングポイントに届くのかを測定して、各チャンネルの Delay 距離(時間)を設定しています。測定用マイク、オーディオインターフェイスがあれば、パソコンで容易に測定できます。
測定ができない時代には「マルチアンプシステムは良い⾳がしない」と⾔われたのは当然のことと思います。
現代はリニアフェーズのチャンネルディバイダーを使うマルチアンプシステムに Room 補正を組み合わせることが綺麗な⾳を聴ける必要条件になったと実感しています。
(長くなりましたので4回目に続きます。)
Purelizer 使用報告(その4) - t.t
2025/01/16 (Thu) 21:51:58
最後に試聴結果を記載します。ここはどうしても主観的になってしまい、うまく伝えるのが難しいです。
7.試聴結果
Purelizer導入前は、以下の構成で聴いていました。
オーディオプレーヤー→ルーム補正装置(DiracLive)→チャンネルディバイダー(直線位相でない IIR タイプ、スロープは LR-24dB/oct)→DAC 内蔵パワーアンプ4台→4wayスピーカー、機器間の接続はS/P DIF(COAX)です。
チャンネルディバイダーまでをパソコンでの処理に変更して比較した印象です。ルーム補正は2(3)で書いたとおり音楽再生ソフトに組み込んでいます。
⾳の前後左右への広がり感が、明らかに改善されました。演奏者の細かい拘りが聴こえるようになりました。
ルーム補正装置で位相の調整を⾏えば、チャンネルディバイダーの位相特性の影響は軽微と考えていましたが、それが誤りだと認識しました。
ちょうど、12月に某メーカーのフラッグシップ機の試聴会がありましたので、妻と自宅の音(Purelizer使用)と比較するために参加しました。メーカー製の機材はCDプレーヤー、アンプが各50万円、スピーカーが2本で140万円のものでした。音はソフトによって変わるので、自宅から持ち込んだソフトも聴かせてもらいました。
差は歴然でPurelizerを使った音が遥かに良かったです。特に大編成のオーケストラでは個別の楽器の音が非常に良く聴こえてきます。小編成の弦楽器の曲でも、ソリストの微妙な音の出し方がわかり、演奏者がこんなにも一音一音をこだわって弾いているのかと。
普段から楽器を演奏している妻の方が私より驚いています。
Purelizerとルーム補正を組み合わせた音に慣れると、LC ネットワークを使っているスピーカーの⾳は高級品であっても平面的に聴こえてしまいます。
自宅のDAC、パワーアンプ、スピーカーはすべて自作で、特にスピーカーユニットには高級品は全く使っていません。そういった機材の差よりも、リニアフェーズのチャンネルディバイダーやデジタルのルーム補正の方が大きな影響があるのだと思います。
ただ、これは老舗メーカーにとっては不都合な真実であり、展開されることは期待薄です。
8.謝辞
Purelizerのおかげでリニアフェーズの素晴らしさを知ることができました。このようなソフトを開発され、さらに掲示板の書込みに対応して改良に応じていただいたフラチキ様に、⼼よりお礼を申し上げます。
(終わり)